(2019年5月16日)
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安倍 晋三 内閣総理大臣さま
岩屋 毅 防衛大臣さま
島 眞哉 近畿中部防衛局長さま
抗議・申し入れ書
2019年5月16日
米軍Xバンドレーダー基地反対・近畿連絡会
代表世話人 大湾宗則 服部良一
連絡先 京都市上京区四番町121-5 大湾宗則方
電話/FAX 075-467-4437
京丹後市の米軍経ケ岬通信所(Xバンドレーダー基地)開設以来、米軍人・軍属による交通事故の頻発は、周辺の住民に大きな不安を与えてきた。これに対して防衛省は、「加害・被害を問わず事故内容を報告する」と約束し、これまで事故発生直後に日時、場所、加害か被害かも含めて具体的な内容が報告され、「米軍経ケ岬通信所安全・安心対策連絡会」(安安連)でも文書で事故内容の報告がなされてきた。
しかし、昨年2月4日の事故を最後に、防衛省は事故内容の報告を突然停止した。そればかりか、本年3月19日の第19回安安連において近畿中部防衛局の本間克哉管理部長はこれまでの約束を撤回し、「今後は飲酒運転などによる重大な事故を除き発生件数のみを報告する」と表明した。さらに、3月28日の参議院安保・外交委員会で、岩屋防衛相はこれが米軍からの要請にもとづくものであり、「重大な事故」であるかどうかの判断は「第一義的に米軍が行う」と答弁した。そして、「事故の報告について明確な合意があったとは承知していない」と述べた。
私たちは、この3月19日の近畿中部防衛局の表明に厳しく抗議し、その撤回を要求する。そして、米軍関係者の交通事故について、速やかにその詳細を報告することを継続するように要求する。岩屋防衛相は、「米軍からの要請」を理由としているが、日米合同委員会でそれに合意してきたのは安倍政権・防衛省である。米軍に責任を転嫁することは許されない。
そもそも事故の報告について明確な合意がないというのは、まったく事実と異なる。2014年12月8日の第3回安安連において、桝賀近畿中部防衛局企画部長(当時)が「今後、知りえた情報はただちに関係自治体に通知する」と約束し、それ以降の安安連においても「加害・被害を問わず事故内容を報告する」と表明してきたことを忘れたと言うのか。そして、住民の求めに応じて安安連において事故の詳細が報告されてきた。近畿中部防衛局の表明は、この約束を公然と反故にしようとするものである。事故の詳細な報告は、米軍関係者による事故を抑止し、再発を防止していくための前提である。防衛局の表明は、住民の安全・安心をさらに脅かすものに他ならない。また、日米地位協定の規定によったとしても、公務中の米軍関係者の事件・事故の第一次裁判権は米軍にあるが、公務中以外の事件・事故の第一次裁判権は日本側にある。にもかかわらず、「重大な事故」であるかどうかは「第一義的に米軍が判断する」として、米軍に判断をすべてゆだねるのはまったく筋が通らない。
この間、米軍Xバンドレーダー基地をめぐっては、基地建設にあたって防衛省・米軍が行った約束が次々に破られ、反故にされるという事態が相次いでいる。2018年5月15日には、ドクターヘリの運航時にレーダーが停止しなかったという事件が発生した(不停波問題)。その件について防衛省は、緊急ヘリ運航時に「要請を受ければ米軍レーダーを速やかに停波する」という2014年10月23日の無条件停波の合意を反故にし、「米軍の運用上やむをえない場合を除き停波する」という答弁書を国会に提出した。また、「経ケ岬通信所は防衛的なものなので攻撃の対象にはならない」という当初の説明に反して、米軍は基地を防衛するための鋼鉄製シェルター・防御壁・銃座付き監視塔の設置を計画し、昨年11月には関西各地から自衛隊を動員した基地防護訓練までが実施された。それ以外にも、基地建設二期工事での土曜工事の恒常化、米軍属の集団居住・集団通勤の約束の不履行など、枚挙にいとまがないほどである。今回の事態もまた、そのような防衛省・米軍の約束破りの一環である。こんなことが許されるのであれば、防衛省・米軍が何を約束しても意味がなくなる。
私たちは、あらためて3月19日の近畿中部防衛局の表明の撤回、米軍関係者のすべての事故の詳細な情報の報告を要求する。また、緊急ヘリ運航時の米軍レーダーの無条件停波を約束した2014年10月23日合意の完全な実施を要求する。そして、米軍基地を要塞化する動きに反対する。住民の安全・安心と米軍基地は両立しない。東アジアの平和への流れを強めていくためにも、京丹後の米軍基地は撤去されるべきである。
以上、抗議し申し入れる。
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質問書
2019年5月16日
① 岩屋防衛相の「事故の報告について明確な合意があったとは承知していない」という答弁はまったく事実に反している。2014年12月8日の第2回安安連において、桝賀近畿中部防衛局企画部長(当時)が「今後、知りえた情報はただちに関係自治体に通知する」と約束し、それ以降の安安連においても「加害・被害を問わず事故内容を報告する」と表明してきた。このことは、2014年12月9日の毎日新聞でも報道されている。そして、昨年2月まで住民の求めに応じて事故情報は報告され続けてきた。近畿中部防衛局は、この事実を否定するのか。
② このような約束を反故にし、今後は重大な事故を除いて件数だけを報告するという方針変更の理由は何か。米軍からの要請だというのであれば、なぜ防衛省はそれに同意したのか、理由を明らかにされたい。
③ 昨年2月4日の事故の報告を最後にして、一年余にわたって事故の報告が停止した理由は何なのか。米軍との協議が必要だったとしても、停止している間も事故は発生し続けていたのであり(京都府警によれば14件)、事故情報の報告は継続すべきだったのではないか。
④ 「重大な事故」であるかどうか、「第一義的に米軍が判断する」とする法的な根拠は何なのか。日米地位協定や日米合同委員会でのこれまでの合意の中に根拠となる条項があるのであれば明らかにされたい。
⑤ 3月19日の第19回安安連で、宇川連合区長は「事故の具体的な内容がわかることで対策が取れる」と指摘し、これまでと同様にすべての米軍関係者の事故の詳細な報告を求めた。第19回安安連での近畿中部防衛局の表明は、住民に不安感を与え、安心・安全を脅かすものとなっているとは思わないのか。近畿中部防衛局は、このような住民の不安感に真摯に向き合い、住民説明会を開催するべきである。安安連は、非公開で住民の誰でもが参加できる場ではない。住民の誰でもが参加でき、質問や意見を表明できる住民説明会を開催するべきではないのか。
⑥ 緊急ヘリの運航時の米軍レーダーの停波について、2014年10月23日合意では「要請を受ければ速やかに米軍レーダーを停波する」とされており、無条件での停波を約束するものとなっている。しかし、2018年7月17日の防衛省の井上哲士参議院議員への回答書では、「米軍の運用上やむをえない場合を除き」とされており、条件付きの停波の約束となっている。ここには明らかに矛盾がある。「米軍の運用上やむをえない場合」には、要請を受けても米軍レーダーが停波しない場合もあるということなのか。
⑦ 米軍による鋼鉄製シェルター・防御壁・銃座付き監視塔の建設計画、また自衛隊を動員した基地防護訓練は、京丹後の米軍基地を要塞化するもので到底容認できない。これらの動きは、今後どう進められていくのか説明されたい。また、これらの動きは基地が攻撃対象となることを想定したものではないのか。防衛省は基地建設にあたって、「基地は防衛的なものなので攻撃の対象になることはない」という趣旨の説明を行ってきたが、現在はどのように認識しているのか。
⑧ 2018年10月、相模総合補給廠に米陸軍のミサイル防衛の新たな司令部(第38防空砲兵旅団司令部)が設置された。当時の報道では、PAC3を配備する沖縄県・嘉手納基地の部隊、Xバンドレーダーを配備する京都府・経ケ岬と青森県・車力の部隊がその指揮下に編成されたとしている。私たちは、東アジアの軍事的緊張を高めるこのような動きに反対する。今後、この新司令部の指揮下に入る部隊はどうなっていくのか。グアムのTHAAD、韓国・星州に配備中のTHAADもこの指揮下に置かれるのか。また、この司令部が日米両軍の統合司令部へと改編されることもありうるのか。
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